甲状腺内科

目次
甲状腺とは
甲状腺は、喉ぼとけの下に位置するちょうちょうの様な形をした小さな臓器です。
体の新陳代謝を促進するホルモンを産生・分泌しています。
甲状腺ホルモンの役割
甲状腺ホルモンは、エネルギーの消費や体温の上昇、心拍数の増加など、全身の代謝活動を活性化するホルモンで、生きていくのに不可欠なホルモンです。
甲状腺疾患の分類
甲状腺機能の異常
甲状腺機能亢進症・甲状腺中毒症(甲状腺ホルモンが過剰)
甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモンが不足)
甲状腺形態の異常
びまん性甲状腺腫(甲状腺全体が大きく腫れている)
結節性甲状腺腫(甲状腺内にしこりができて腫れている)
甲状腺疾患の主な症状
甲状腺ホルモンが多い時の症状
- 動悸・息切れ
- 暑い・汗が多い
- 手がふるえる
- イライラしやすい
- 体重が減る(あるいは食べる量が多いわりに体重が増えない)
- 食欲が亢進する
- 軟便・下痢
その他倦怠感や月経周期の異常などが現れることがあります。
甲状腺ホルモンが不足しているときの症状
- 寒さを感じやすい
- 疲れやすい
- 皮膚が乾燥する
- 体重の増加
- むくみやすい
- 便秘
その他脈が遅い、コレステロール値が高くなった、髪の毛が抜ける、月経周期の異常などが現れることがあります。
代表的な甲状腺疾患
バセドウ病(グレーブス病)
自己免疫の影響で甲状腺ホルモンが過剰に産生・分泌される疾患です。
古典的には甲状腺の腫れ、眼球突出、頻脈(メルゼブルグの三徴)が有名ですが、すべての症状がそろう方は多くはありません。動悸や体重減少、手のふるえなどをきっかけに受診される患者さんが多いです。
日本では1,000人に0.2~3.2人の方がバセドウ病にかかると報告されており、男女比は1:3~5と、女性に多いことが知られています。
橋本病(慢性甲状腺炎)
自己免疫の影響で甲状腺に慢性の炎症が起こる疾患です。健診などで甲状腺が腫れていることを指摘され、診断されることが多いです。
橋本病と診断された場合でも甲状腺機能が正常の場合は特に症状がでることはなく、治療も不要です。
甲状腺機能低下症を合併した場合(橋本病の患者さんのうち約30%程度)は倦怠感、冷えやむくみ、体重増加などの症状が出ることがあります。
日本では非常に頻度の高い病気で、成人女性の10人に1人、成人男性の40人に1人にみられると報告されています。
甲状腺のしこり
良性と悪性(甲状腺がん)に分類されます。
超音波検査所見からある程度の分類は可能ですが、診断に穿刺吸引細胞診が必要となることがあります。
穿刺吸引細胞診が必要な場合には連携施設へ紹介いたします。
甲状腺疾患と症状が似ている疾患
甲状腺に異常がない場合には適切な科に紹介します。循環器疾患に関しては当院で精査が可能です。
動悸や倦怠感、汗が多くなるなど多彩な症状 | 自律神経失調症、更年期障害 |
だるさや無気力 | 副腎機能低下、うつ病など |
動悸・息切れ | 不整脈や心機能低下などの循環器疾患、喘息・肺気腫など呼吸器疾患 |
体重減少 | 甲状腺以外の部位の癌、うつ病など |
むくみ | 腎疾患、下肢静脈瘤など |
甲状腺疾患の診断と治療
診断方法
血液検査
甲状腺ホルモン(FT4、FT3)および甲状腺刺激ホルモン(TSH)測定により甲状腺機能の評価が可能です。

甲状腺自己抗体関連検査であるTRAb、抗サイログロブリン抗体(TgAb)、抗TPO抗体(TPOAb)の測定によりバセドウ病、橋本病の診断をすすめます。いずれの検査も院内迅速検査により1時間弱で結果が出ます。
超音波検査
甲状腺のサイズの確認、しこりの有無を確認します。必要に応じて甲状腺血流の評価も行います。

穿刺吸引細胞診検査(連携施設に紹介)
超音波検査で「良性と考えられてもサイズが大きい場合」や「悪性が否定できない場合」に必要になります。
必要と判断した場合には連携施設(隈病院、かみたに内科・甲状腺クリニック)に紹介いたします。
治療方法
バセドウ病
治療法として薬物治療、アイソトープ治療、手術があります。
それぞれに適した病状、メリット・デメリットがありますので病状により最適な治療法を提案します。
アイソトープ治療、手術療法が必要な場合には隈病院に紹介します。
甲状腺機能低下症
必要に応じて甲状腺ホルモン剤の補充を行います。甲状腺ホルモン剤は適切な量を使用すればほとんど副作用がなく長期間内服の安全性も確立されています。
当院の甲状腺疾患診療の特徴
専門的な診療体制
甲状腺疾患の経験豊富な専門医が診療を担当します。


迅速な検査と診断
院内で甲状腺機能(FT4 FT3 TSH)、バセドウ病や橋本病の抗体が迅速に測定可能です。
そのため迅速な診断・治療方針決定を行うことができます。
またバセドウ病の薬の副作用確認のため白血球数・好中球数の計測も院内迅速検査で対応します。
甲状腺疾患の治療をお考えの方へ

バセドウ病や甲状腺機能低下症は長期にわたる通院・治療が必要です。普段の生活を快適に過ごしつつ無理なく治療を継続できるようサポートいたします。治療にお悩みの方は一度ご相談ください。
甲状腺に関するよくあるご質問
甲状腺は首の前側、「喉ぼとけ」のすぐ下にあります。 蝶が羽を広げたような形で気管を包み込むようにあり、たて4cm、厚さ1cm、重さ15gくらいの小さな臓器です。 正常の大きさの甲状腺は外から手で触ってもほとんどわかりませんが、腫れてくると手で触ることができるようになります。
甲状腺自体と喉・口の中とはつながっていません。
甲状腺機能の異常によるもの(甲状腺機能低下症あるいは亢進症、甲状腺中毒症)と甲状腺の形態によるものに大きく分けられます。
甲状腺機能低下症の代表的な原因としては橋本病(慢性甲状腺炎)、機能亢進症の代表的な原因としてはバセドウ病が挙げられます。
甲状腺の形態異常による疾患としては甲状腺全体が腫れる場合、甲状腺のなかにしこりやのう胞ができる場合などが挙げられます。
甲状腺機能低下症の状態が続くと全身の新陳代謝が低下します。体重が増えたりむくみが出やすいという症状以外に血中の悪玉コレステロールが高値の状態が続くと全身の動脈硬化が進行する可能性もあります。また高齢の方では物忘れの症状が強くなることもあります。必要と判断された場合には適切な治療を継続することが大切です。
バセドウ病の薬はほとんどの薬と併用が可能です。
バセドウ病の薬は数日の中断でも甲状腺機能が悪化することがありますので自己判断で中止しないようにしましょう。心配な場合は電話でご相談ください。